今年の前半、金沢では、将棋と囲碁のタイトル戦が3回も行われた。2月の北國新聞会館での将棋棋王戦5番勝負の第2局目、4月の滝亭での将棋名人戦7番勝負の第2局目、5月の尾山神社金渓閣での囲碁本因坊戦7番勝負の開幕戦第1局目である。囲碁の碁聖戦と将棋の棋王戦は北國新聞社のはからいで、金沢対局が頻繁に行われ、これは石川県や北陸地方の囲碁将棋ファンにとってとても有り難いことだが、今年は、それに将棋名人戦と囲碁本因坊戦が加わったのである。これは、金沢で「カルチャーセンター石心」を主宰する佃優子さんの懸命の努力に負うところが極めて大きいが、私は、佃さんに極くささやかにお手伝いした余慶で、将棋囲碁タイトル戦の金沢対局の雰囲気にたっぷり浸ることができた。その顛末は、新田義孝石川県人会専務理事の編集によるニューズレター「石川県人会の絆」と、それをネット上にアップした「石川県人 心の旅」に、その都度、記してきた。その結果、2月から5月まで4回発行されたニューズレター中の私の雑文の中身を、3回も囲碁将棋の話が占めることとなった。しかし、「絆」では、話のバランスをとることも必要なので、ここしばらくは、この話題から離れざるをえない。ただ、それではいささか淋しいので、「心の旅」に単独で囲碁将棋を論じて、その淋しさを癒やそうとと思い立った次第である。
言うまでもなく、私は囲碁も将棋も弱く、プロの着手はあまり理解できない。よって、専門的な囲碁将棋の中身について云々する立場では全くないが、囲碁将棋にまつわる素人の思いなら、書きたいことがいっぱいある。そこで、時間を見つけて、幅広く、囲碁将棋にかかる諸々の「バンガイ」のことを綴っていきたいと思ったのである。
この「バンガイ」は、二つの意味を兼ねている。ひとつは、プロ棋士達が命を懸けて研鑽している囲碁将棋の内容、すなわち、盤の上のことではなく、素人の胸中を去来する盤の外、「盤外」の話という意味である。いまひとつは、「石川県人 心の旅」を本編とすれば、この囲碁将棋シリーズはその「番外」という意味である。この二つは漢字が違うので、表題はカタカナ表記にした。
さて、盤外に関しては、囲碁将棋の実戦で、我々素人も、時に盤外戦術とおぼしき手を使うことがある。それは、大して困ってもいないのに「参った参った」を連発し、相手に優位を誤認させて良い気持ちにし、甘い着手を誘発するなどのやり方である。プロにも盤外戦術はあるのだろうが、私には高級過ぎて分からない。
盤外と言えば、手許に2006年5月に講談社文庫として刊行された「先崎学の実況!盤外戦」なる一書がある。著者の先崎学九段は、トップ将棋棋士の一人として、ファンが多く、病を得ながらもそれを克服して、「うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間」という本も書かれ、同書はテレビドラマになって放映された、とにかく才能豊かで話の抽斗(ひきだし)を多く持っている方である。先崎九段は、若い頃、極め付きの読書家であったようで、この「盤外戦」の書も、実に面白い随筆集だ。私は何度も読み返し、こんな達意の文章が書けるようになりたいと、いつも自戒の糧としている。この本で述べられた楽しい話題に関する私の反応のいくつかも、この「バンガイ編」で述べてみたいと思っている。
そんなことで、さらなる我が駄文を「石川県人 心の旅」に追加していくことにするが、笑い飛ばしながらお目通し頂ければ幸甚である。
(2022年6月18日記)
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