将棋は子供にとって馴染みやすいゲームである。もちろん、将棋のルールを知らなければ将棋を指すことはできないが、ルールを知る前から、将棋盤と駒を使っていろいろなゲームで遊ぶことができ、それが将棋を指すことへのキッカケになるかもしれない。そのゲームとは、「はさみ将棋」、「まわり将棋」と「山くずし」である。私は子供の頃、家の将棋盤で、友達とこれらのゲームを頻繁に楽しんだ。
「はさみ将棋」は、敵方の駒を挟んで除去していくゲームである。出発点では、双方が駒を9個ずつ一段目と九段目に向かい合って並べる。従って使う駒は、18個である。双方が通常の将棋を指す場合の駒の初期配置の手前一段目のみを残した形である。個々のコマの強弱は全く関係ないから、敵味方の区別をはっきりするために、一方が「歩兵」、他方が「と金」で揃えれば分かりやすい。ぞれぞれのコマは、普通の将棋の飛車のように縦横に動くことが出来る。互いに交代で駒を動かし、相手の駒を縦か横かに挟んだ時、それを捕獲という意味で除去する。隅で二方を囲んでも除去できる。かくして相手の駒を一枚にしてしまうとか、相手が一定の数に減ってしまうとか、自分と相手の駒数にある程度の差がついたときに勝ち負けが決まる。複数の駒を一挙に挟むなど、挟み方を工夫することが求められて、なかなか面白いゲームである。
「まわり将棋」は、将棋盤を使用した双六のような感じである。自分のコマと相手のコマが、盤の隅、すなわち[1一]と[9九]の位置から出発して、盤の辺の部分をぐるぐる廻る。具体的には、自分のコマが[1一]から出発する場合は、[一]の列を下って[一9]に達し、それから[9]の行を進んで[9九]に達し、それから、[九]の列を上がって[1九]に達し、[1]の行を[1一]に向かって戻りグルグル廻るという方式である。相手は、[9九]から同じように廻り、いずれかが相手に追いついたら勝ちになる。ここで、一回毎に進む数は、双六のサイコロの代わりに、金将を4枚振って、表が出た数だけマスを進む。全部裏なら、進むことができない。金将が横倒しなら5マス、直立すれば10マス、逆立ちすれば20マスなどと決めるのが一般的である。コマの振り方は、金将4枚を両方の手のひらに包んで、盤の中央部に落下させればよい。私達は、金将を四枚重ね、コマ上方の狭い方を内側にして右手の人差し指と中指の間に挟み、それを盤上に投げ出す方法をとっていた。こうすると横倒しや直立の可能性が高くなるように思ったからである。勝ち負けのつけ方はいろいろ変化させることができ、王将を元々の位置、すなわち[5一]と[5九]に置いて、双六の「上がり」と位置づけ、そこで止まったら勝ちとしたり、飛車や角行を[1五]と[9五]に置いて、そこに来れば一回休みにするようなルールも作りうる。いずれにしても、将棋の駒と盤を利用した双六と言えよう。上の例では、時計回りに廻ることにしたが、実際は反時計回りに廻るようにして遊んだことが多かったと記憶している。
なお、上の説明で「行」と「列」の言葉を用いたが、改めに将棋は特有の用法をしていることを感じた。一般にパソコンなどでは、横筋を行、縦筋を列と呼び、「行」から「列」の順に呼ぶのが通例だが、これに対して、将棋では、[3四]などとアラビア数字で縦筋を先に、漢数字で横筋を後にして表現している。しかも、アラビア数字は、通常の先手を下にした図で、右から左に向って順に振られている。これは、かつて本欄で述べたとおり、歴史的背景のしからしむところであろう。
最後は、「山くずし」である。これは極めて簡単な遊びで、将棋盤の中央部に40枚の駒全てを不規則に山のように盛り上げて積んでおき、それを一枚ずつ音を立てずに人指し指で、山から分離、離脱させて盤上をずらせ、盤外に出すゲームで、二人だけではなくて、三人でも行いうる。これには音が響きやすい将棋盤が不可欠だが、駒も、やわらかいホウノキの駒では、音がしにくいので面白くない。やはりツゲのような硬い音のしやすい駒をそっと起こし、それを盤上に倒して運ぶプロセスが何ともいえず楽しい。
以上が、私の子供の頃、近所の友達を楽しんだ将棋遊びであるが、これらが、将棋を私達の身近なものとして親しむのに随分役にたったと思っている。(2026年3月20日記)
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