2023.07.26 02:11(22)囲碁と歌舞伎[2]碁太平記白石噺 前回に続いて歌舞伎と囲碁の話。そして将棋も少々。私は幼い頃病弱で、よくお医者さんにかかり、家では蒲団に横たわっていた。曾祖母は、そんな私の病床に、いつも枕屏風を立てかけてくれていた。その屏風には昔の絵が四枚貼ってあった。左の二枚のうちの一枚は、妖しい顔で変な目つきの男。もう一枚は、頭いっぱいに花かんざしをつけたお姫様のような女性。右の一枚は立派な大人の男性、いま一枚は若い女性が二人上下に描かれていた。その枕屏風はもうなくなったが、今にして思えば、これらは歌舞伎の浮世絵だった。 左の二枚の男女は「義経千本桜」の「四の切」、「河連法眼館の場」の狐忠信と静御前だった。男は佐藤忠信に化けていた狐が本性を顕わしたところなのだから、顔が妖しげなのは当然で、お姫様...