2022.09.24 12:15(12)本因坊就位式 9月9日、本因坊就位式に呼ばれたので、末席を汚すため、ひさしぶりに目白椿山荘の門をくぐった。椿山荘はなつかしい。私は大学生時代の4年間、このホテルの極く近くにある財団法人和敬塾の北寮で過ごした。神田川左岸の目白台は、田中角栄邸、目白運動場、細川侯爵邸のあとの和敬塾、講談社の野間省一邸、そして旧山縣有朋邸であった椿山荘が並ぶようにして続いていて、今も、様子はそれほど変らない。学生時代は椿山荘に入ったことはなかったが、夏には、椿山荘で放す蛍が和敬塾の私の部屋の窓辺まで飛び来って、蛍雪の功成れかしと励ましてくれるように感じたものの、その甲斐がなかったのは残念ではあった。その後、椿山荘は、旧科学技術庁の若手職員の仲人を務めたり、北國新聞社が牽引する1000人...
2022.09.16 07:38(11)控える 9月4日の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第34回「理想の結婚」で、菊地凛子さん演ずる北条義時第三の妻「のえ」が登場した。「のえ」は、義時との見合いの場では極めてしおらしく振る舞い、肩の上の落ち葉をそっと取ったり、贈られた茸を大好きと言ったりして、好感度満点の態度だった。かくして、義時の妻の座を確実にしたのだったが、他の侍女とおぼしき女性達だけと一緒になったときには、義時から貰って好きだと言った茸を「嫌いだから持って行きな」と侍女に下げ渡し、「(もはや自分は)鎌倉殿とも縁者ってこと、控えよ、控えよ」と冗談めかしながら高飛車に叫ぶ場面を、義時の息子泰時に見られてしまうというシーンがあった。先行きの展開がいろいろ気になるところであるが、ここで私は「控えよ」と...
2022.09.02 12:11(10) 視力 8月9日の竜王戦挑戦者決定戦。広瀨章人八段と山崎隆之八段の対局を中継ブログで見ていたら、昼食休憩明け対局再開の前に「定刻前、両者は眼鏡を外して目を休めていた」という記述と写真があった。その後、対局をAbemaTVでフォローしたら、夕刻以降山崎八段は一度ならず目薬をさされていた。将棋対局は目に大きな負担をかけるようだ。 私は、子供の頃から近視で、視力に自信がなかったし、娘は専ら顕微鏡を覗く病理の仕事で目を酷使しているので、ずっと目の疲労について関心を持ってきた。ただ碁将棋に関しては、私は大会で一日3局連続して盤に向かっても、あまり目の疲れを感じない。我が対局は30分から最長2時間弱の短時間決戦で、目をこらす時間がない。盤面を凝視して深く考えたいが、考え...
2022.09.02 12:08(9)囲碁将棋人口 最近、将棋の藤井聡太五冠の驚異的勝率でのタイトル獲得・防衛や、少女囲碁棋士仲邑菫さんの活躍で、囲碁将棋がテレビや新聞やネットに登場する機会が多くなった。それにともなって、囲碁将棋に関心を持つ人が増えているのではないかと言う向きがある。ぜひ、そうあってほしいと思うが、実態はどうだろうか。 私の率直な感じで言えば、私の若い頃、囲碁や将棋は、今よりもっと身近にあったように思う。企業や官庁のオフィスのロッカー上には、碁盤と碁笥に入った碁石、あるいは将棋盤と駒箱の中の駒が置いてあって、昼休みには昼食もそこそこに一局10分から30分の超短時間対局がそこここで楽しまれていた。最近は、娯楽がとみに多様化していて、いろいろなスマホのゲームを気軽に楽しめる。今や相手なし...
2022.09.02 12:05(8)国民娯楽 バンガイ編の初回で書いたとおり将棋の先崎学九段は特別な能力を有する棋士である。もっとも、囲碁将棋のプロ棋士は、一般人に懸絶する棋力の持ち主ばかりだが、先崎九段は、加えて、その筆力が、そちらのプロにもなりうる程で、「先崎学の実況!盤外戦」は、実に読ませる随筆である。そんな九段は、文藝春秋の2021年5月号のコラムに「将棋短歌」と題する一文を草し、自身の著書「先崎歌壇笑」の紹介とともに、同僚棋士を詠んだ歌を示され、「将棋は遊びで、人の笑顔をつくるためのものである」と喝破されている。最後は、「人の世に 活気を 余暇に くつろぎを なにもつくらぬ 棋士の役目は」と、句またがりの一首で締めくくられている。確かに将棋棋士や囲碁棋士は、直接生活に役立つ製品を造った...