2025.08.25 07:04(49)勝ちと負けと かつて囲碁と将棋は、文字通り国民娯楽であった。今なお、そうであると思いたいが、統計によれば、囲碁将棋人口は減りつつある。将棋は下げ止まったともされているが、往時に比べれば、近年の数字は残念というほかない。 今も昔も、我々の多くは、企業や組合や学校等という組織に属して働いているが、かつては、その仕事場であるオフィスのロッカーの上に、折りたたみ式の碁盤や将棋盤が置いてあり、その上には碁石の入った碁笥や将棋の駒箱が乗っていた。昼休みともなると、食事を早々に済ませて、囲碁や将棋の対局がはじまることが多かった。 しかし、今のオフィスの様子はかなり違っていると聞く。そもそも最近はオフィスのセキュリティ管理が厳しく、昼休みといえども、友人のオフィスに気軽に入ること...
2025.07.25 22:35(48)棋戦の主催と新聞の囲碁将棋欄 毎日新聞社とスポニチ新聞社が、2024年をもって将棋棋戦王将戦の主催を降りて、特別協力という形になったのは、今年1月の本欄に書いたとおりであり、王将戦は日本将棋連盟の単独主催ということになった。ただ、この方式が長く続くのも容易なことではないと思われる。タイトル棋戦の主催にどれくらいの予算が必要か知るよしもないが、大きな企業といえども、簡単に出せる額ではないだろう。長期的に王将戦がどうなっていくか、気になるところである。 このような状況において、次期の叡王戦に関するスケジュールや予選の予定が、定例の6月を過ぎても公表されず、叡王戦がこれで終了するのではないかと憂慮する向きもあった。しかし、先日、引き続き不二家主催のもと、叡王戦の予選組合せが発表され、こ...
2025.06.29 14:25(47)清水会長誕生と大熊健司氏 日本将棋連盟の羽生善治会長の後任に清水市代女流七段が選ばれた。初めて誕生した女流棋士の会長によって、将棋連盟に新しい風が吹き込まれよう。将棋棋士を志す女性が更に増え、また、新しく採用された制度や従来方式によって、近く「女流棋士」から「棋士」になる方が出ることも期待される。「女流棋士」は「棋士」ではないのかと、いぶかしく思われる向きもあろうが、「棋士」とは、基本、年に二度の三段リーグでトップ2名に入る勝率を得て四段に昇段される方(次点の方の扱いが別にあるが)と、公式戦で好成績を収めて棋士編入試験の受験資格を得てそれに合格された方々のみが得られるステイタスであり、現在まで、女性で「棋士」になった方はおられず、「女流棋士」ということで、その中でタイトル戦を...
2025.05.27 07:50(46)駒の強弱ランキング 近年、ランキングが大流行である。もともと、私達はいろんなものに順序付けすることに興味がある。江戸時代でも、相撲の番付にならって、例えば温泉番付とか料理屋番付とかいろいろなものがランキングされていたのを今も見ることができるが、最近、その傾向がとみに顕著になったということだろうか。いかなるものも、量的な比較が可能な限り、それを順に並べれば、ランキングになり、量的比較ができにくくても、アンケート調査などの手段で得た回答数を比べてそれをランキングにすることは可能である。個人の主観的評価をランキングの形に並べることもできる。 このうち、都道府県の面積比較などは、尺度が一本で、数値が明らかなので、順序がはっきりしている。この場合でも、最近は都道府県の境界が変わる...
2025.04.20 07:29(45)お好み置碁道場 私は、「技術経営士会囲碁会」というグループのメンバーである。「技術経営士」とは、一般社団法人技術同友会が創った私的資格であり、民間企業や官庁などで長年技術関係の経営経験を積んだベテラン技術者が、その経験を若い方々にお伝えして、企業経営、学校教育、社会活動等のお役に立ちたいという目的で創られた。現在200人ほどいる技術経営士のほとんどが会員となって「技術経営士の会」という団体を運営しているが、その中で、囲碁が大好きな10人あまりで結成したのが、この囲碁会である。はじめは学士会館に集まって対面で対局したが、コロナ以降は、基本、オンラインで打ってきた。 仲間うちの強豪は、日立出身の上田新次郎さんと日石出身の松村幾敏さんで、日本工営出身の臼田誠次郎さんが世話...
2025.03.23 10:22(44)女性人気とAI 日本将棋連盟と北國新聞社(共同通信社)主催の将棋棋王戦コナミグループ杯挑戦手合いは、タイトル保持者藤井聡太棋王に、増田康宏八段が挑戦する顔合わせとなった。藤井棋王先勝の後を受けた第二局が2月22日、金沢の北國新聞会館で指されて藤井棋王が連勝したが、私は、幸運にもその前夜祭に参加することができた。その晩は、100名を越すファンや大勢の関係者が会場の金沢ニューグランドホテルに詰めかけたが、その中にかなりの数の女性の方々がおられて、いよいよ金沢でも、将棋は女性に普及してきたかの感を深くした。 しかし、この一局の立会人青野照市九段の言葉を聞いて驚いた。九段は、ここでの女性の割合は低いと言われたのである。九段によれば、東京等の同じような会場では女性が圧倒的に多...
2025.02.23 13:07(43)椅子対局 かつて金沢での名人戦の後に、夜遅い食事をお相伴させて頂いた前の名人で永世竜王と永世棋王の資格保持者渡辺明九段の動静がニュースになっている。膝の具合が悪くて、対局途中での投了、あるいは不戦敗ということになったと報じられた。また、漫画家の伊奈めぐみさんと昨年の「いい夫婦の日」に同居離婚されたとの報道もあった。詳細は分からないが、九段が引き続き素晴しい将棋を指し続けて、将棋界を牽引し続けられることを祈るのみである。 気になるのは、膝の具合だ。実際、長時間の和室での将棋対局で、長時間座り続けるのは容易ではなく、まして、かなりの時間、正座されているのは、足への負担は大変なものだと想像される。九段の膝が画期的に良くなることを強く期待したい。 和室での着座について...
2025.01.21 08:12(42)王将戦の主催 囲碁将棋人口は減少を続けているとされているが、新年を迎えて、今年はぜひ、囲碁と将棋が多くの方々の楽しめる娯楽文化であると再認識される年であってほしいと念願している。 ところが、この1月7日、スポーツニッポン社と毎日新聞社が王将戦の主催を降りて、特別協力の形になると新聞やネットで報じられた。誠に残念である。 名人戦、王将戦、本因坊戦など囲碁や将棋のプロ棋戦の多くは、新聞社と日本棋院、関西棋院、日本将棋連盟の主催によって行われてきて、多くのファンを獲得し、今日に至っている。毎日新聞社などの各新聞社の囲碁将棋振興に対する貢献は誠に大きく、私はファンの一人として、これまで新聞社が果たしてきた役割とその功績に深く感謝している。しかし、このところ、新聞全体の中で...
2024.12.13 03:40(41)リアルとオンライン コロナ以来、オンライン会議がすっかり定着した。私が関係している公益財団法人の理事会や評議員会などは、オンライン出席が正規の出席とみなされるので、とてもありがたい。新法人制度が発足した当初、理事会と評議員会は本人出席が厳密に求められていたので、定款の定める定足数確保に苦労した話を聞いたことがあったが、オンラインは状況を一変した。 囲碁将棋もオンラインによる対局がかなり広く行われるようになった。これまでも囲碁将棋のソフトがどんどん開発されて、一人でソフトを相手にパソコンに向かって勉強かたがた対局する方が多くあったが、オンライン対局では、ソフトではない人間がパソコンの向こうにいるのだから、実際の対局に近い臨場感がある。ソフトは、今や強弱いろいろ調整できて、...
2024.11.25 12:24(40)二人零和有限確定完全情報ゲーム 前回論じたように、囲碁将棋などは、「二人零和有限確定完全情報ゲーム」といわれるが、これはいかなることを意味するのであろうか。また、囲碁将棋は、厳密にそれに当てはまるのだろうか。前回書いたように若干の議論はありうる。 まず「二人」であるが、これは言うまでも無く、二人で勝ち負けを競うのが囲碁将棋であるから、これについては疑義が発生するところはない。 次に「零和」については、その二人が対局すれば、勝つか負けるか引き分けかで、一人が勝てばもう一人は負ける。プラスマイナスがぴったりバランスするという意味である。囲碁も将棋もこれにも当てはまっている。囲碁将棋対局の結果がウィン・ウィンになればいいが、そんなことはない。まさに「零和」と言い切りたい。しかし、囲碁につ...
2024.10.28 01:42(39)ノーベル賞と囲碁将棋 今年のノーベル賞では、何と言っても、日本原水爆被害者団体協議会の平和賞受賞が特筆されるが、物理学賞、化学賞ともAI関係の研究者技術者が受賞対象となったことも大きな注目を浴びた。 今やAIは、我々の生活に大きな役割を果たしている。物理学賞、化学賞の両方で、AI開発が脚光を浴びたのは、まさに時代の反映と言える。 物理学賞は、AIの中核ともされる機械学習の基礎を確立して、「ディープ・ラーニング」等の新たなモデルの形成につなげた米国プリンストン大学のジョン・ホップフィールド教授とカナダのトロント大学ジェフリー・ヒントン教授が受賞された。ヒントン教授には、2019年に本田財団から本田賞を贈呈し、同財団の役員として私自身も直接その謦咳に接したので、教授のノーベル...
2024.09.23 02:00(38)石の下 「碁盤斬り」の映画では、「石の下」という囲碁の手筋が重要な役割を果たしている。このくだりは、私の知る限り、落語「柳田格之進」の中では語られることがないので、映画化の際に新たに付け加えられたものかと思われる。誰が「石の下」をこの映画に用いることを考えたのか。碁の内容を指導された井山王座碁聖十段か関山九段か藤沢女流三冠か、あるいは、出演者かスタッフか。プロでないならば相当の碁好きの方の発案と思われる。ともかく、主人公と敵役の間で緊迫する囲碁勝負が行われ、「石の下」の筋が現れた場面では、私は思わず手を握りしめた。 「石の下」とは、どんな手筋か。ウィキペディアを見ると、「囲碁用語の一つで、意図的に相手に石を取らせて空いた交点に着手する手筋のこと。実戦に現れる...